自社株にまつわる典型的なトラブルとして、株式の本来の所有者ではない人が名義上で所有者になっている「名義株」によって生じる問題があります。
有名なところでは、2017年に戸建て住宅販売大手の飯田グループホールディングスの創業者遺族が
名義株の問題に絡み、東京国税局から80億円以上の相続財産の申請漏れを指摘されました。遺族は相続税を納めるに当たり不動産や預金、関連会社を含む自社株について相続財産として申告していましたが、自社株を保有する資産管理会社の一部の株式については長男名義だったため相続財産に含めていませんでした。
しかし、国税局は長男名義の株式の取得資金を創業者が負担していたことから、長男名義の資産管理会社の
株式を名義株と認定し、実質的には創業者が所有していたとみなし、その株式を相続財産として課税しました。その結果、遺族には40億円もの追徴課税がなされてしまいました。
会社にも名義株が残っていると追徴で課税されるというだけではなく、自社株が分散してしまう可能性が
高くなるというリスクも持ちます。名義株主が遠い親戚や他人だと、相続でさらに遠い親戚にまで株が渡ってしまうこともありますし、まったく関係のない第三者が会社の経営に口を出してくる可能性も否定できま
せん。
また、皆様がよく勘違いなさっていることが、自社の株式には「譲渡制限」が付いているから第三者に
売られることはないと思っていることです。これに対する答えは、「譲渡制限」が付いていても売却できて
しまいます。なら「譲渡制限」は何のために付いているのかというと、売却する株主に「ちょっと待ってくれ」という効果しかありません。そのため、名義株も含めて分散している株式は生前中に株主の了解を得て集約していくしか方法がありません。
聞いたところによりますと、昔はボーナスとして現金の代わりに株式を渡していた社長様もいらっしゃた
ようです。知らないところで将来のリスクがどんどん拡大していたこととなります。
さらに、お金を出していない株主(名義株)も配当金を受領した瞬間から正規の株主と判断されますので、
配当金を出す際は十二分にお気を付けください。
目の前の業務に忙殺されて事業承継対策を後回しにしてしまう社長様は多いです。または、自分は永遠に
死なないと思われているような社長様も多く見受けられます(あくまで私見です。ご了承ください)。
お気持ちは分かりますが、残された遺族に迷惑をかけないためにも、ご自身の目の黒いうちに対策をして
いただくようお願い申し上げます。
応援しています。
令和7年7月吉日
有限会社エフピーマネジメント 代表取締役 大友 一夫

