最近の中堅・中小企業の事業承継の状況ですが、親族内の承継、親族外の承継、M&A等のうち、「親族外の承継(従業員等)」が段々と増えてきています。これには次のような障害があります。その障害を解決
できる方法があるとすれば、一考に値するのではないでしょうか。
1.従業員等を後継者とする場合に経営権だけを取得させる。
従業員等への最大の障害は、従業員等が株式を買い取る資金が無いということだと思います。
そこでファンドに投資を依頼する方法もありますが、ファンドも採算が取れなければ手を出しません。
そこで、財産権ではなく経営権の一部だけを従業員等が取得すれば、株式の購入価格は大幅に下がります。(注)普通株式=「財産権」+「経営権」→ これだけを従業員等に承継させる。
2.種類株式を設計し、経営権を共有する。
従業員等は資力がないので、株式の一部しか買い取ることができません。ただ、経営権を維持できるという条件を満たせば、従業員等への承継もできることになります。
それは、「拒否権付種類株式は普通株式と同様に評価される」という平成19年3月 国税庁の回答に
より、税務上の取り扱いが明確化されたことを利用して、次のような種類株式にします。
・現社長の有するA種類株式
普通株式と同じ権利を有する種類株式とし、合併や多額の借り入れをする際の特別決議に必要な3分の2以上の議決権を所有する。
・従業員等が有するB種類株式
従業員等が資力に応じて株式を買い受け、その株式は経営者の立場を確保できるように、役員の任期途中での解任を拒否できる権利を付けた黄金株にする。
3.最後に、役員の任期等について
役員の任期や取締役会・監査役を置くか否か、さらには会計参与を置くことなどを併せて、自社に適する定款設計をして下さい。例えば、後継者の任期が2年では不安です。かと言って最長の10年ではオーナーが不安になります。そこで色々なことを勘案して5年とし、取得条項付「逆・黄金株」を取得していただくのはいかがでしょうか?もしご興味あれば顧問の税理士さんに相談してみて下さい。税理士であれば必ず相談に乗っていただけると思います。
(参考文献 「中小企業の事業承継15訂版」 著:税理士 牧口晴一氏)
令和7年5月吉日
有限会社エフピーマネジメント 代表取締役 大友 一夫