遺留分侵害のリスクを見積もるためには、相続税法上の評価額だけではなく、時価で評価した金額も必ず把握してください。顧問税理士に株価評価の依頼をすると、大体の方が相続税評価額の計算を行います。
しかしながら、遺留分侵害のリスクが表面化した場合は時価評価となりますので、業歴が長い法人、
または優良な法人等は相続税の評価額と時価の評価額が5倍から10倍になってしまうこともあります。
もし御社の自社株を生前 後継者に贈与していた場合、一定期間経過後であれば相続税の計算に贈与した
株式は含まれませんが、遺産分割で揉めた場合は一定期間経過後の株式も遺留分の計算に含めなければ
ならないことがあります。
さらに、この金額は相続開始時の評価額で計算されますので、贈与から相続の間に後継者が会社の成長に貢献した価値(株価の上昇分)も遺留分の計算に反映されてしまいます。
私のお客様でも、自社株の一部を後継者以外の長女・次女にも贈与されている方がおられ、特例事業承継税制を活用するのに非常に困ってしまいました。
長女は後継者と折り合いが悪く退職し、次女は全く経営に関与していません。そこで、特例事業承継税制で
後継者へ贈与を行い、その税制継続中に父である現会長(85歳)に相続が発生した場合、遺産分割で揉める
可能性が高いため、民法特例の遺留分の自社株に関する放棄を長女に提案したところ、完全に拒否されて
しまいました。万事休すです。
これは顧問税理士に相談して行われたのですが、税理士の方は機械式に行ってしまうきらいがあります。
財産の金額もですが、それ以上に長女の感情というところにもう少しフォーカスして対策を考えていれば
良かったのかもしれません。
心の奥深くに持っている感情をないがしろにすると纏まるものも纏まらない典型かなと思います。
とにかく、この民法上の遺留分の対策を事前にしっかり準備し、遺産分割は揉めるかもしれないという考えを持っておくことが肝心です。
車の運転でも「だろう運転」ではダメ、「かもしれない運転」が基本です。皆さま、「かもしれない」という考えを持ち、準備をしっかり行っていきましょう。
家族が裁判で争うことは絶対に避けるべきと思います。
応援しています。
令和7年10月吉日
有限会社エフピーマネジメント 代表取締役 大友 一夫

