1.質問
当社は株券発行会社ですが、株券不発行でずっと株の贈与等を行ってきました。このため、現状の株式保有
割合は全くの無効で、会長がいまだすべての株式を保有していることに法律上はなるのですが、
そうしてしまうと大混乱が起きるので、全員が無効な贈与等を追認した上で株券不発行会社に定款変更し
今後の贈与譲渡をしていくことは可能でしょうか?
2.回答
前提として、株券発行会社の場合の理解(会社法129条1項 及び 2項)というのが世の中的に
少々誤解されているのではないかという部分もありますが、まずポイントだけ説明いたします。
- 株式の贈与をした場合、当事者間の贈与契約は「無効」ではありません。
- (物権的な)会社に対する株主権の移転が起こらないという意味になります。
なので、会社から見た保有割合という意味では正しいです。
つまり、契約自体は有効なため、受贈者は贈与者に対して株券の引き渡し請求自体はできます(ただし、書面によらない贈与の場合は履行されていないので、贈与が撤回される可能性はあります)。
実際に株券を発行していない会社のケースにおける、最高裁 令和6年4月19日判決(会社法129条2に
関するもの)でも、「株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、【譲渡当事者間においては】
当該株式に係る株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはない」と判示されています。
その一方で、(当事者ではなく)会社に対する関係での株主は誰かという意味では株券の交付は
必要とされますので、株券発行会社であった当時の贈与を当事者が追認したからといって、
その過去の時点(贈与時点)に遡って贈与が有効であったというわけではありません。
つまり厳密には、改めてこれから株券交付を受けた時点で、会社との関係において株主権が移転したと
評価することになります。
3.結論
自社株の贈与・譲渡を考えている法人は、株券発行会社が不発行会社に定款変更をした後に贈与等を
行うことが鉄則です。(弁護士法人ピクト法律事務所 弁護士 永吉啓一郎 氏の言より引用)
応援しています。
令和6年6月吉日
有限会社エフピーマネジメント 代表取締役 大友 一夫