令和6年12月に令和7年度税制改正大綱が発表されましたが、その陰に隠れるように公正取引委員会
から非上場株式の評価方法について大変重要な意見書が国税庁へ提出されていたことについて、オーナー
経営者の方々はどのくらいお気づきになっているのでしょうか?
ということで、今月はこちらの件に関して書いてみたいと思います。
まず、公正取引委員会による直近の検査状況について概略を書きます。令和2年・3年の相続税・贈与税の
申告のうち、取得した財産に取引相場のない株式がある申告の中から無作為抽出した1,600件が検査されて
います。
~検査状況 その1~
▢ 原則的評価方式による評価の状況
・類似業種比準価格の中央値は純資産価格中央値の27.2%となっており、類似業種比準価格は純資産価格に比べて相当程度低い水準。
計算式に類似業種比準価格が用いられている類似業種比準方式及び併用方式による各評価額は、
純資産価格方式による評価額に比べて相当程度低く算定され、各評価方式の間で1株当たりの評価額に相当の乖離が生じている状況。
・純資産価格に対する申告評価額の割合の分布状況を見ると、その中央値は大会社 0.32倍、中会社 0.50倍、小会社 0.61倍 ➡ 評価会社の規模が大きい区分であればあるほど、株式の評価額は相対的に低く算定される傾向。
類似業種比準価格が下がる方向で評価通達が改正されてきたことや、評価通達の計算式が評価会社の業績等の実態を踏まえて適切に機能していない恐れがあることなどが要因となっていると思料される。
このような状況は、異なる規模区分の評価会社が発行した取引相場のない株式を取得した者の間で株式の評価の公平性が必ずしも確保されているとは言えないと思料される。
~検査状況 その2~
▢ 特例的評価方式(配当還元方式)による評価の状況
・配当還元方式の還元率(10%)は、評価通達制定当時(昭和39年)の金利等を参考にするなどして設定。
その後、還元率は金利の水準が長期的に低下する中で見直されていない。
10%の還元率に基づいて算定される評価額は、通達制定当時と比べて相対的に低くなっている恐れがあると思料される。
いかがでしたか。公正取引委員会からのこのような指摘は、早ければ2~3年以内に税制改正(改悪)に
つながる恐れがあります。
令和7年3月吉日
有限会社エフピーマネジメント 代表取締役 大友 一夫