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相続発生時の2種類の「持ち戻し」ルールの違い ~ 3年?10年?それとも無期限 ~

相続税には、生前贈与の「持ち戻しルール」というものがあります。相続発生までの数年間に行われた

生前贈与については、贈与ではなく相続によって得た財産として扱い、贈与税ではなく相続税を課す

ルールのことです。言い換えれば、死期を悟ってからの駆け込み贈与を無効にする仕組みと言えます。

相続税と贈与税では贈与の方が税率は高いですが、贈与は相続財産全体の減少につながり、

非課税特例も数多いことからトータルの税負担を少なくできる傾向にあります。

仮に相続発生直前の贈与を認めると、「相続税で取られるよりは」と駆け込み贈与をする人ばかりに

なってしまい税収が大きく減少するため、相続税法の「持ち戻しルール」が設けられているわけです。

持ち戻す期間はこれまで3年でしたが、最新2023年度税制改正において、2024年1月1日からの贈与に

関しては7年に延長されました。ただし、実際に持ち戻し期間が3年を超えるのは2027年以降になります。

尚、この7年持ち戻しルールは税制上の規定です。間違えやすいですが、「民法」にも持ち戻しルールが

存在します。こちらは特定の法定相続人(事業会社では後継者)への生前贈与があった時に、

「遺産の前渡し」があったとしその分を遺産に合算して遺産分割や遺留分の算定を行うというものです。

こちらについては3年どころか、何十年前の贈与であっても対象とする恐ろしい制度です。

2018年に改正された民法により、遺留分の計算については相続前10年以内の生前贈与の持ち戻しの

対象とするよう改められましたが、遺産分割時の計算にあたって時効はなく、どれだけ前の贈与でも

持ち戻されてしまいます。

民法の持ち戻しルールについては、遺留分に関する民法特例、いわゆる「除外合意」を使うことで

ある程度の問題解消が期待できます。同特例は、相続に関わる全員の合意があればある財産(例:自社株等)を遺留分の対象となる基礎財産から外すことが出来るというものです。

ただ、この特例を実行するためには遺産を1円でも多く貰いたいという相続人ら全員の同意を取り付ける

必要があるため、実際の利用はここ3年間でも年平均50件を下回っており、簡単な話ではないことは

言うまでもありません。

 

以上、相続発生時に税法のことを気に掛ける方が多いように思いますが、本当に恐ろしいのは

「民法」です。

そのことを頭に入れながら、生前贈与を行ってほしいと思います。

最後に、贈与のコツは「短期間」で「多額」の贈与を行い、出来るだけこの贈与した財産を遺産分割協議に含まれない財産へと変えておくことです。

 

ご興味があればご一報ください。私は税理士ではございませんので節税のお話はできませんが、

その他の事であればトータルプランニングさせていただきます。是非お含みおき下さい。

 

応援しています。

 

令和5年4月吉日

有限会社エフピーマネジメント 代表取締役 大友 一夫

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