大株主に相続が発生した場合に相続クーデターが起きる可能性があります。
それは何故なのかを事例を持って説明したい思います。
前提条件 ①:父が自社株を100%保有する状況で、その父に相続が発生。
②:後継者は、父が生前から長男のAへと考えており、Aもそのつもりで会社の専務として従事。
③:他の相続人は、父の妻B(AとCの母)、次男Cと後継者Aの合計3名
④:父は生前、遺言書を書いておらずそのまま相続発生。
⑤:故に、法定相続の割合は父の妻 50%・長男A 25%・次男C 25% となります。
当然、長男Aは自分が後継者なので、父が持っていた自社株の51%以上は自分が相続するものと
思っていました。しかしながら、そうはいきませんでした。
母と長男Aは何かと折り合いが悪く、母は次男Cを大変可愛がっていました。
結果から話しますと、株主総会で長男Aは専務取締役を解任、会社から追い出され、代表取締役には
次男Cが就任し、母がそれを助けるために取締役として会社に入りました。
長男Aは何故このようなことになってしまったのでしょうか。それは、相続した自社株が相続人3名の
共有財産になる事を長男Aが全く知らなかったからでした。
遺言書が無い場合、父の財産はすべて相続人3名の共有財産となります。自社株も例外ではありません。
そのため、遺産分割協議が整わない限り共有状態が続くこととなります。
特に法人の場合、次期代表取締役が決まらない限り、銀行との取引、販売先・仕入先との取引に多大なる
支障が出るため、早期に決める必要性があります。
では、自社株の行き先はどのように決めるかというと、相続人3名の多数決で決めることとなります。
すなわち、長男Aと母B、並びに次男Cの3名で多数決です。父は相続発生時に自社株100%を
持っていた訳ですから、この100%の自社株を3名で多数決により決定します。
その結果、長男A 対 母B + 次男C の2対1となり、次男Cが100%の自社株を引き継ぐ事と
なりました。長男Aからしてみれば、まさかこんな事になるとは夢にも思っていなかったでしょう。知らない、
またはこの事に関して詳しいアドバイザーが居なかったことが、長男Aは後悔してもしきれない状況です。
その後、この会社は、やはり次男Cの経営者としての腕があまり高くなく、じり貧に向かっているとの
ことです。無事に長男Aが引き継いでいればどうなっていたのでしょうか。それは誰にも分かりませんが、
次男Cよりはうまく行ったかもしれません。こうならないためにも、普段から家族でコミュニケーションを
よく取り、親子の関係性を良くしておくことが相続時の重要なポイントだと私は強く思います。
※追伸 私は長男Aとも次男Bとも肌が合わず、3度程お会いしましたがアドバイス業務は一切
行っておりません。
応援しています。
令和6年10月吉日
有限会社エフピーマネジメント 代表取締役 大友 一夫